宅建業免許を法人で取る流れ|設立から免許交付までの全手順

- 宅建業免許を法人で取るには、会社設立と免許申請の二段構えが必要になる。
- 法人設立から免許交付までの目安は、準備が整っていればおおむね2〜3か月。
- 営業保証金1000万円の供託より、保証協会加入(分担金60万円)を選ぶ会社が大半。
- 定款の事業目的に「宅地建物取引業」を明記していないと、免許申請でつまずく。
- 専任の宅地建物取引士が常勤・専任で1事務所あたり従業者5人に1人以上必要。
宅建業免許を法人で取るまでの全体像と所要期間

法人で宅建業免許を取得する流れは、会社を設立してから免許を申請する二段構えで、準備が整っていれば法人設立から免許交付まで2〜3か月が現実的な目安です。
私が申請を代行する場合、最初に確認するのは「会社がもうあるか、これから作るか」です。これから作るなら、定款の事業目的の書き方から関わらないと後で必ず手戻りが出ます。
法人設立から免許交付までの日数目安とスケジュール
ざっくり言うと、法人設立に2〜3週間、免許申請の審査に都道府県でおよそ30〜40日。ここに事務所探しや書類集めの時間が乗ります。
| 段階 | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 会社設立 | 定款作成・認証・設立登記 | 2〜3週間 |
| 事務所・宅建士 | 事務所確保、専任宅建士の確定 | 設立と並行 |
| 免許申請 | 必要書類を揃えて申請 | 審査30〜40日程度 |
| 保証協会加入 | 入会手続き・分担金の納付 | 2〜4週間程度 |
正直に言うと、ここで一番時間が読めないのは「書類集め」です。役員の身分証明書や登記されていないことの証明書は本籍地の役所や法務局に取りに行くので、遠方だと郵送で1週間消えます。
難易度と必要な前提条件・準備するもの
難易度は「手続きの量は多いが、要件を満たせば落ちにくい」というのが私の実感です。創業融資や建設業許可に比べれば、要件が明確な分つまずきにくい。
最低限そろえる前提条件は次の3つです。
- 独立性のある事務所(応接スペースを確保できる空間)。
- 専任の宅地建物取引士(常勤・専任で勤務できる人)。
- 欠格事由に該当しない役員・政令使用人。
個人事業と法人どちらで開業すべきかの判断ポイント
金融機関との取引や売主からの信用を重視するなら、私は法人を勧めます。不動産は扱う金額が大きく、法人格の有無で取引相手の警戒度が変わるからです。
一方、まず1人で細々と始めて様子を見たい人は個人でも免許は取れます。ただし後から法人化すると免許を取り直す(新規申請からやり直し)ことになり、二度手間になります。
ステップ1:会社(法人)を設立する手順
法人設立は「資本金を決める→定款を作る→認証を受ける→設立登記をする」の順で進め、宅建業用の会社は定款の事業目的に宅地建物取引業を必ず書きます。

ここを雑にやると、後の免許申請で「事業目的に宅建業がない」と指摘され、定款変更の登記からやり直しになります。実際にそれで2週間ロスした相談者がいました。
資本金の設定金額の考え方と宅建業での目安
宅建業免許に資本金の最低額の決まりはありません。1円でも免許は取れます。
ただ、私は最低でも数百万円は入れることを勧めています。保証協会加入や事務所の保証金、当面の運転資金を考えると、見せ金のような薄い資本金は取引先からの信用にも響くからです。
定款の事業目的に宅地建物取引業を明記する書き方
事業目的には「宅地建物取引業」という言葉をそのまま入れます。ここが免許申請のときに必ず確認される箇所です。
具体的にはこう書きます。
1.宅地建物取引業 2.不動産の売買、賃貸、管理及びその仲介 3.前各号に附帯関連する一切の事業
「不動産業」とだけ書いて宅地建物取引業の語が抜けているケースをよく見ます。審査側はこの一語を見るので、必ず明記してください。
定款認証・登記の流れと完了の確認目安
株式会社なら、作った定款を公証役場で認証してもらい、その後に法務局へ設立登記を申請します。合同会社なら定款認証は不要です。
登記が完了すれば登記事項証明書(登記簿謄本)が取れるようになります。これが取れた時点で会社は正式に存在し、免許申請に進めます。
法人設立にかかる実費の内訳(登録免許税・定款認証・印紙代)
会社設立そのものにかかる実費は、株式会社で電子定款を使えばおおむね20万円台です。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 登録免許税(設立登記) | 15万円(資本金×0.7%が下限を上回る場合は高くなる) |
| 定款認証手数料 | 資本金額に応じ概ね3万〜5万円 |
| 定款の収入印紙 | 電子定款なら0円(紙は4万円) |
| 登記事項証明書・印鑑証明など | 数千円 |
ステップ2:事務所と専任の宅地建物取引士を整える
宅建業免許では、独立性のある事務所と、その事務所に常勤・専任の宅地建物取引士を置くことが必須で、ここが満たせないと申請しても通りません。

私の経験上、免許申請でつまずく最大の山がこの2つです。書類は直せても、事務所と人は直すのに時間がかかります。
専任の宅建士の常勤性・専任性の判断基準と兼業制限
専任の宅地建物取引士は、1つの事務所の従業者5人に1人以上の割合で必要です。
「常勤」はその事務所に通常勤務していること、「専任」はもっぱらその事務所の宅建業に従事していることを指します。他社の常勤役員を兼ねていたり、遠隔地に住んで通えなかったりすると専任性を否定されます。
- 他の会社の代表取締役を兼任していると専任性が認められにくい。
- 通勤が困難なほど遠方に住んでいると常勤性を疑われる。
- 非常勤・パート扱いでは専任の宅建士にできない。
事務所要件の具体例(独立性・間取り・自宅兼用やレンタルオフィスの可否)
事務所は、他の業者や生活空間から独立し、継続的に業務ができる形が求められます。
自宅の一室を事務所にすること自体は可能ですが、玄関から生活空間を通らずに事務所スペースへ入れること、来客対応ができることなどが条件になり、ハードルは高めです。
レンタルオフィスは、個室で施錠でき独立性が保てるタイプなら認められる例があります。ただしフリーアドレスの共用席は基本的に不可です。自治体ごとに判断が違うので、契約前に必ず申請先へ確認してください。
ここまでできていれば申請準備は整っているという目安
会社が登記済みで、独立した事務所が確保でき、専任宅建士が常勤・専任で勤務できる状態。この3つがそろえば、あとは書類を集めて申請するだけです。
ステップ3:宅建業免許を申請する手順と必要書類

宅建業免許の申請は、事務所の所在によって都道府県知事免許か国土交通大臣免許を選び、申請書と添付書類を揃えて窓口へ提出します。
書類の量は多いですが、一つずつチェックリストで潰せば抜けは防げます。私はいつも提出前に二度確認します。
知事免許と大臣免許の使い分けと事務所増設時の切り替え
事務所が1つの都道府県内だけなら知事免許、2つ以上の都道府県にまたがるなら大臣免許です。
| 区分 | 対象 | 申請先 |
|---|---|---|
| 都道府県知事免許 | 1つの都道府県内にのみ事務所がある | 事務所所在地の都道府県 |
| 国土交通大臣免許 | 2つ以上の都道府県に事務所がある | 主たる事務所所在地経由で国土交通省 |
知事免許で開業した後、別の都道府県に支店を出すと大臣免許へ切り替える「免許換え」が必要になります。最初から複数県で展開する予定なら、増設時の手間も見込んでおくと安心です。
必要書類の詳細一覧とチェックリスト
法人申請で必要になる主な書類は次のとおりです。役所で取る証明書類は有効期限があるので、申請直前に取るのがコツです。
- 宅地建物取引業免許申請書(様式に沿って記入)。
- 宅地建物取引業に従事する者の名簿。
- 役員・政令使用人・専任宅建士の略歴書。
- 身分証明書(本籍地の市区町村で取得)。
- 登記されていないことの証明書(法務局で取得)。
- 誓約書(欠格事由に該当しない旨)。
- 専任の宅地建物取引士の設置証明関係書類。
- 事務所の使用権原を示す書類(賃貸借契約書など)と写真・間取り図。
- 法人の登記事項証明書、定款の写し、直近の貸借対照表など。
免許申請の手数料(新規33000円)の金額
知事免許の新規申請手数料は33,000円です。都道府県の収入証紙などで納めます。
これは免許そのものの手数料で、後述する保証協会の費用や法人設立費用とは別です。費用を見積もるときは混同しないでください。
申請でつまずきやすい点と対処
よくある差し戻しは、事務所写真の撮り方と、専任宅建士の常勤性です。
うまくいかないときは、事務所の写真をビル外観・入口・室内・看板まで一通り撮り直す。専任性で迷ったら、申請前に窓口へ電話で個別事情を相談する。これで多くは解決します。
ステップ4:営業保証金または保証協会への加入を済ませる
免許の通知が来たら、営業を始める前に営業保証金1000万円を供託するか、保証協会に加入して分担金60万円を納めるかのどちらかが必要で、実際にはほとんどの会社が保証協会を選びます。

理由は単純で、現金1000万円を法務局に預けっぱなしにするのは中小企業には重すぎるからです。
営業保証金1000万円の供託と保証協会加入60万円の費用比較
| 方式 | 必要な金額 | 特徴 |
|---|---|---|
| 営業保証金を供託 | 主たる事務所1000万円 | 現金を供託所に預ける。廃業時は戻るが拘束が重い |
| 保証協会に加入 | 弁済業務保証金分担金60万円 | 開業資金を大きく抑えられる。別途入会金等が必要 |
保証協会2団体(ハトマーク・ウサギマーク)の違いと選び方
保証協会は全国宅地建物取引業保証協会(ハトマーク)と不動産保証協会(ウサギマーク)の2つがあり、どちらか一方に加入します。
分担金の仕組みはどちらも同じです。違いは母体団体や提供される研修・物件流通の仕組み、地域の支部の活発さ。私は、地元で会員数が多く相談窓口が近い方を勧めることが多いです。会員同士の物件情報のやり取りで差が出るからです。
免許が下りないケースと欠格事由のチェック
宅地建物取引業法に定める欠格事由に役員などが1人でも該当すると、ほかの要件を満たしていても免許は下りません。

申請の前に、ここだけは最初に確認してください。後から発覚すると、それまでの準備がすべて無駄になります。
過去の違反歴・暴力団排除条項など免許が下りない具体例
- 一定の犯罪で罰金・禁錮以上の刑を受け、その後一定期間が経過していない。
- 過去に宅建業免許を不正取得などで取り消され、一定期間が経過していない。
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から一定期間を経ていない。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない。
この欠格事由は役員全員と政令使用人が対象です。社長は問題なくても、名前を貸しただけの取締役が引っかかる例があるので注意してください。
失敗事例・つまずきやすいポイントと対策
実際にあったつまずきを挙げます。どれも事前に確認すれば防げたものです。
