宅建業免許の取得方法を6ステップで解説|要件・費用・期間まで完全ガイド

- 宅建業免許は都道府県知事免許で、申請から交付まで標準処理日数は約30日(自治体により前後)。
- 専任の宅地建物取引士を事務所ごとに5人に1人以上置く必要がある。
- 初期費用は保証協会へ加入する場合で総額150万〜200万円ほどが目安。
- 営業保証金を供託する場合は本店だけで1,000万円が必要で、実務では保証協会加入が現実的。
- 事務所要件と書類の記載ミスが、却下・差し戻しの二大原因。
私は行政書士として8年間、宅建業免許の申請をサポートしてきました。元は不動産仲介会社で営業と管理職をやっていたので、「免許を取った後に実際どう困るか」も含めて書きます。
宅建業免許とは?取得方法の全体像と所要期間

宅建業免許とは、土地や建物の売買・交換・貸借の媒介などを業として行うために必要な許可で、宅地建物取引業法に基づき都道府県知事または国土交通大臣が交付します。
無免許で宅建業を営むと、宅建業法違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象になります。
宅建業免許でできること・必要になる場面
免許があれば、自社で物件の売買や賃貸の仲介を反復継続して行えます。
よく誤解されますが、自分が所有する1棟を貸すだけの大家業には宅建業免許は要りません。免許が必要になるのは「他人の取引を媒介・代理する」「自ら売主として反復継続して売買する」場合です。
私のところに相談に来る方の多くは、独立して仲介会社を立ち上げるケースか、建設会社が分譲を始めるケースです。
申請から交付までの標準的な流れと期間の目安
知事免許の場合、申請書を受理してから免許の通知まで、標準処理日数はおおむね30日前後です(自治体により異なる)。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 準備 | 事務所確保・取引士確保・書類収集 | 2〜4週間 |
| 書類作成 | 申請書・添付書類の作成 | 1〜2週間 |
| 申請・審査 | 窓口提出から審査完了まで | 約30日 |
| 保証協会加入 | 入会審査・分担金納付 | 2〜4週間 |
| 免許証交付 | 保証金供託または分担金納付の確認後 | 数日 |
正直に言うと、ボトルネックになるのは審査そのものより「事務所の確保」と「保証協会の入会審査」です。ここで1か月単位で前後します。
難易度と必要な前提条件をひと目で確認
難易度は決して高くありませんが、要件を1つでも満たさないと一発で差し戻されます。
- 専任の宅地建物取引士を確保している(自分が取得していればなお良い)。
- 継続的に使える独立した事務所がある。
- 申請者・役員に欠格事由がない。
- 初期費用150万円以上を用意できる。
宅建業免許の取得要件を満たしているか確認しよう
宅建業免許の取得には、専任の宅地建物取引士の設置・独立した事務所・欠格事由がないことの3つを同時に満たす必要があります。

順番に確認していきましょう。ここをクリアできるかで、そもそも申請に進めるかが決まります。
宅地建物取引士の専任設置の要件
事務所ごとに、業務に従事する者5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。
「専任」とは、その事務所に常勤し、宅建業に専従していること。他社の役員を兼ねていたり、別の場所で常勤の仕事を持っていたりすると、専任とは認められません。
一人で開業するなら、自分が取引士証を持っていれば最短です。持っていない場合は、有資格者を雇うか、自分が試験に合格して登録するまで待つことになります。
事務所の物理的要件(独立性・間取り・写真の撮り方)
事務所は、継続的に業務を行える独立した空間でなければなりません。
実務で一番つまずくのがここです。自宅の一室やバーチャルオフィスは、原則として認められません。
- 他の部屋や住居スペースと壁などで明確に区切られている。
- 固定電話・事務机・応接セットなど業務に必要な設備がある。
- 入口から事務所まで他社や住居を通らずに入れる。
- 看板・標識を掲示できる。
申請には事務所の写真が必要です。私はいつも「入口の外観」「室内全体」「事務机周り」「他室との仕切り」の4点を、明るい時間に撮るようお願いしています。仕切りが分かりにくい写真は差し戻しの原因になります。
申請者に欠格事由がないかの確認
申請者本人や法人の役員に欠格事由があると、免許は交付されません。
代表的なのは、過去に免許を取り消されて5年を経過していない、禁錮以上の刑や宅建業法違反の罰金から5年経っていない、破産して復権していない、といったケースです。
法人の場合は非常勤役員まで含めて確認します。意外と見落とされがちなので、申請前に全役員分をチェックしてください。
個人事業主と法人どちらで開業すべきか
金融機関からの融資や元付業者との取引を重視するなら法人、初期コストと手間を抑えたいなら個人事業主が向いています。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 不要 | 株式会社で約20万〜25万円 |
| 対外的な信用 | やや弱い | 強い |
| 免許の引継ぎ | 本人限り(相続不可) | 法人として継続可能 |
| 税制 | 所得が増えると不利 | 一定以上の所得で有利 |
| 開業の手早さ | 早い | 設立手続き分だけ遅い |
私の率直な意見では、本気で事業として続けるなら最初から法人を勧めます。後から法人化すると免許を取り直しになり、二度手間とコストがかかるからです。
宅建業免許の取得手順を6ステップで解説
宅建業免許は「準備→書類作成→申請・審査→免許通知→保証協会加入→免許証交付」の6ステップで取得できます。

ここでは前半4ステップを動作単位で並べます。保証協会加入と交付は次章で詳しく扱います。
手順1 申請の準備をする
まず事務所を確保し、専任の宅地建物取引士を決め、添付書類を集めます。
- 事務所の賃貸借契約書(使用承諾書が必要な場合あり)を用意する。
- 専任の宅地建物取引士の取引士証を確認する。
- 役員・取引士の身分証明書、登記されていないことの証明書を取得する。
- 法人なら登記事項証明書、定款を準備する。
ここまでで「事務所・人・身分関係の書類」がそろっていれば準備は正しく進んでいます。
手順2 申請書類を作成する
自治体の様式に従って免許申請書と添付書類を作成します。
東京都の場合、申請様式と手引は東京都都市整備局のサイトからダウンロードできます。
特に書き間違いが多いのが「専任取引士の従事先の重複」と「事務所の使用権原」。略歴書の空白期間も突っ込まれやすいので、職歴は連続するよう埋めてください。
手順3 申請・審査を受ける
作成した書類一式を所管の窓口に提出し、審査を受けます。
知事免許の場合、提出先は事務所を管轄する都道府県の窓口です。提出時に申請手数料33,000円を納めます。
窓口で書類のその場チェックがあり、不足があると受理されません。私は予約を取って、補正に備えて印鑑を持参するようにしています。
手順4 免許の通知を受け取る
審査が通ると、免許する旨の通知(ハガキ等)が届きます。
ただし、この時点ではまだ営業できません。通知後に営業保証金の供託か保証協会への加入を済ませ、免許証の交付を受けて初めて開業できます。
営業保証金の供託と保証協会加入はどちらを選ぶ?

資金に余裕がない限り、ほとんどの新規開業者は保証協会への加入を選びます。
供託なら本店だけで1,000万円が必要ですが、保証協会なら分担金60万円で済むからです。差は歴然です。
供託と保証協会加入のコスト差を比較
| 項目 | 営業保証金の供託 | 保証協会への加入 |
|---|---|---|
| 本店分の金額 | 1,000万円 | 弁済業務保証金分担金 60万円 |
| 支店1か所追加 | 500万円 | 30万円 |
| 別途費用 | ほぼなし | 入会金等で数十万円 |
| 資金の性質 | 供託=拘束される | 分担金=拘束されるが少額 |
率直に言って、自己資金が潤沢で供託金を遊ばせても困らない、という会社以外は保証協会一択です。私が担当した新規開業はほぼ全件、保証協会加入でした。
保証協会へ加入して免許証の交付を受ける流れ
免許通知後に保証協会へ入会申込みをし、分担金と入会金を納付すると、協会から弁済業務保証金が供託され、その報告を受けて免許証が交付されます。
宅建業の保証協会は全日本不動産協会(不動産保証協会)と全国宅地建物取引業協会の2つ。どちらでも免許の要件は満たせます。
入会審査には面談がある協会もあり、ここで2〜4週間みておくと安心です。免許通知が来てから慌てないよう、私は通知前から入会書類を並行して進めます。
それぞれのメリット・デメリット
正直、コスト面では保証協会の圧勝です。あえて両者を並べます。
- 供託のメリットは、協会の年会費や手続きが不要でシンプルなこと。
- 供託のデメリットは、1,000万円という大金が事実上動かせなくなること。
- 保証協会のメリットは、初期費用が大幅に安く、研修や情報提供などの支援が受けられること。
- 保証協会のデメリットは、入会金・年会費が継続して発生し、入会審査の時間がかかること。
宅建業免許の取得にかかる費用の総額と内訳
保証協会へ加入する一般的なケースで、宅建業免許取得の初期費用は総額150万〜200万円ほどです。

内訳を具体的に出します。ここは曖昧にされがちなので、私が実際に案内している金額ベースで並べます。
申請手数料・登録免許税の金額
知事免許の新規申請手数料は33,000円です。大臣免許の場合は登録免許税90,000円となります。
| 免許区分 | 名目 | 金額 |
|---|---|---|
| 知事免許(新規) | 申請手数料 | 33,000円 |
| 大臣免許(新規) | 登録免許税 | 90,000円 |
保証協会加入金・供託金の目安
保証協会へ加入する場合、本店分の弁済業務保証金分担金は60万円です。
これに加えて、協会の入会金・年会費・各種負担金がかかります。協会や地域で差がありますが、合計で100万円前後を見ておくと現実的です。
つまり「分担金60万円+入会関係100万円前後+申請手数料33,000円」で、ざっくり160万円前後。これが新規開業の初期費用の中心です。
自己資金・運転資金の考え方
免許取得費用とは別に、開業後の運転資金を半年分は確保してください。
仲介業は売上が立つまでにタイムラグがあります。家賃・人件費・広告費・ポータルサイト掲載料が毎月出ていくのに、最初の成約までは無収入ということも珍しくありません。
私が見てきた範囲では、初期費用と別に最低でも200万〜300万円の運転資金を持っている人ほど、開業後の立ち上がりが安定していました。ここをケチると苦しくなります。
