宅建業免許を個人で取得する条件と費用・流れを徹底解説

- 個人でも宅建業免許は取得でき、要件は法人とほぼ同じ。
- 満たすべき要件は大きく分けて、常勤の代表者・専任宅建士・事務所・営業保証金・欠格要件の5つ。
- 費用は保証協会に加入すれば100万円前後、営業保証金を供託すると1000万円以上かかる。
- 代表者が自分自身で専任の宅地建物取引士を兼ねることは可能。
- 個人で取った免許は、後から法人へ引き継げない(法人化すると取り直しになる)。
個人が宅建業免許を取得する条件とは

個人が宅建業免許を取得する条件は、専任の宅地建物取引士を置き、独立した事務所を構え、営業保証金を供託(または保証協会に加入)し、欠格要件に当てはまらないことです。
そもそも宅建業免許とは、宅地や建物の売買・交換・賃貸の仲介などを業として行うために必要な許可のこと。これがないと不動産取引を仕事にできません。
「個人事業主だから取れないのでは」とよく聞かれますが、それは誤解です。免許の取りやすさに個人・法人の差はほぼありません。
宅建業免許が必要になるケース
宅建業免許が必要なのは、不特定多数を相手に、反復継続して不動産の売買・交換・仲介を行う場合です。
例えば、自分が持っている土地を1回だけ売るなら免許は不要。ただし、土地を分譲して何区画も繰り返し売るなら免許が要ります。
自分が所有するアパートを大家として貸すだけなら免許は不要です。ここを勘違いして「賃貸経営にも免許が要る」と思い込む人がいますが、自己物件の賃貸は宅建業に当たりません。
個人で取得できる人・できない人
成年で、後述する欠格要件に該当しなければ、個人でも宅建業免許を取得できます。
取得できないのは、破産して復権していない人、一定の前科がある人、暴力団関係者などです。詳しくは後半の欠格要件で具体的に挙げます。
宅建士の資格を自分が持っていなくても免許は取れます。専任の宅建士を別に雇えばよいからです。ただ、個人開業なら自分が宅建士であるほうが圧倒的に身軽です。
免許の有効期間は5年・更新が必要
宅建業免許の有効期間は5年で、継続するには更新手続きが必要です。
私が見てきた中で、更新忘れは本当に痛い失敗です。失効すると営業保証金の手続きからやり直しで、時間も費用も無駄になります。
個人で宅建業免許を取得する7つの要件
個人で宅建業免許を取るには、常勤の代表者・専任宅建士の設置・適合した事務所・営業保証金・欠格要件への非該当という主要要件をすべて満たす必要があります。

ここでは申請現場で特に確認が多いポイントを中心に説明します。書類の細かさより、まず「自分が満たせるか」の判断材料にしてください。
代表者・事務所の責任者が常勤していること
代表者やその事務所の責任者は、その事務所に常勤していることが求められます。
常勤とは、その事務所に毎日きちんと出勤して業務にあたれる状態のこと。他社で正社員として働きながら片手間に、という形は認められません。
個人事業主なら代表は当然あなた自身。ここでつまずくことはほぼありません。
専任の宅地建物取引士を設置していること(5名に1名)
事務所には、業務に従事する者5名につき1名以上の専任の宅地建物取引士を置く必要があります。
| 業務従事者の人数 | 必要な専任宅建士 |
|---|---|
| 1〜5名 | 1名以上 |
| 6〜10名 | 2名以上 |
| 11〜15名 | 3名以上 |
一人で開業する個人事業主の場合、従事者は自分1名なので専任宅建士も1名でOK。あなたが宅建士なら、それで足ります。
「専任」とは、その事務所に常勤し、専らその業務に従事すること。他の会社の社員を兼ねている人は専任になれません。
事務所の形態が適合していること
事務所は、継続的に業務を行える独立した形態であることが求められます。
具体的には、他の事業者や生活空間と明確に区切られ、固定電話・机・椅子・帳簿の保管場所など、業務に必要な備品がそろっていること。
レンタルデスクの一区画や、壁で仕切られていないオープンスペースは原則認められません。ここは審査でよく見られる部分です。
営業保証金の供託または保証協会への加入
取引の相手を保護するため、営業保証金1000万円を供託するか、保証協会に加入して弁済業務保証金分担金60万円を納める必要があります。
正直、個人開業で1000万円を現金で供託できる人は少数です。実際の開業者の多くは保証協会を選びます。費用の差は後ほど表で比較します。
欠格要件に該当しないこと
破産して復権していない、一定の刑罰歴がある、暴力団関係者であるなどの欠格要件に該当すると、免許は受けられません。
これは個人事業主本人だけでなく、政令で定める使用人(事務所の責任者など)にも適用されます。詳細は後の章で具体的に挙げます。
自宅を事務所にできる?事務所要件の判断基準
自宅を宅建業の事務所にすることは可能ですが、生活空間と業務空間が明確に分かれていることが条件です。

個人開業で一番相談が多いのがこのテーマです。実際に認められたケースと、ダメだったケースの両方を見てきました。
自宅兼事務所が認められるケース
自宅の一室を事務所専用とし、玄関から生活空間を通らずに事務所へ入れる動線が確保できていれば認められやすいです。
- 事務所として使う部屋が独立した1室になっている。
- 玄関やドアで生活スペースと明確に仕切られている。
- その部屋に固定電話・机・帳簿保管棚など業務備品がそろっている。
認められないケース
リビングの一角に机を置いただけ、寝室を通らないと事務所に入れない、といった生活空間と一体化した間取りは認められません。
私の経験上、ワンルームの自宅はほぼ通りません。仕切りのない間取りは最初から事務所候補から外したほうが時間を無駄にしません。
代表者が専任宅建士を兼ねられるか
代表者であるあなた自身が、専任の宅地建物取引士を兼ねることは可能です。
あなたが宅建士の登録を済ませていれば、代表兼専任宅建士として一人で要件を満たせます。これが個人開業の最もシンプルな形です。
宅建士の登録がまだなら、資格試験合格後に都道府県への登録と取引士証の交付が必要です。ここに時間がかかるので逆算して動いてください。
個人の宅建業免許取得にかかる費用の総額と内訳

保証協会に加入する場合、申請手数料や入会金を含めた費用の総額はおおむね100万円前後に収まります。
一方、営業保証金1000万円を供託する場合は、当然ながら総額が一気に跳ね上がります。多くの個人開業者が保証協会を選ぶ理由はここにあります。
申請手数料・登録費用などの内訳
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 免許申請手数料(知事免許) | 33,000円 |
| 弁済業務保証金分担金 | 600,000円 |
| 保証協会への入会金・年会費など | 協会により異なる(要確認) |
| 宅建士の登録・取引士証交付 | 登録 37,000円ほか |
知事免許の申請手数料33,000円は法令で定められた額です。宅建士の資格登録手数料も都道府県に納めます。
保証協会の入会金や年会費は協会・地域で差があるため、ここでは具体額を断定しません。加入予定の協会の窓口で必ず確認してください。
営業保証金(1000万円)と保証協会加入(60万円)の比較
| 項目 | 営業保証金を供託 | 保証協会に加入 |
|---|---|---|
| 主たる事務所の負担額 | 1,000万円 | 分担金 60万円 |
| 性質 | 供託(廃業時に戻る) | 分担金+入会金等 |
| 開業時の現金負担 | 非常に大きい | 比較的小さい |
| 向いている人 | 潤沢な資金がある | 資金を抑えて開業したい |
行政書士に依頼した場合の費用相場とDIYとの比較
行政書士に申請を依頼すると報酬がかかりますが、書類不備による補正のやり直しを防げます。
自分で申請すれば報酬はゼロ。ただし、要件の解釈ミスや添付書類の漏れで補正が入ると、開業が数週間ずれることもあります。
正直に言うと、宅建士本人で時間も取れるならDIYでも十分通ります。逆に、本業の準備で手が回らない人は依頼したほうが結果的に早いです。報酬額は依頼先で幅があるので、見積りを取って比較してください。
申請から免許交付までの流れとスケジュール
個人の宅建業免許は、要件確認・事務所準備・書類作成・申請・審査・免許交付という流れで進み、知事免許なら申請から交付まで約30〜40日が目安です。

さらに免許交付後に保証協会加入や供託の手続きがあり、実際に営業開始できるまではもう少し見ておく必要があります。
開業前に要件を確認する
まず最初にやるべきは、自分が7つの要件を満たせるかの確認です。
特に事務所の独立性と専任宅建士の有無は、後から直すのが大変です。物件契約や宅建士登録は申請前に片付けておきましょう。
必要書類の一覧と納税証明書・資産調書
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 免許申請書 | 所定様式に事業者情報を記入 |
| 身分証明書・登記されていないことの証明書 | 欠格要件(破産等)の確認用 |
| 納税証明書 | 個人は所得税の納税証明書 |
| 資産に関する調書 | 個人申請で必要な資産状況の申告書 |
| 事務所の写真・間取り図 | 事務所の形態を確認するため |
| 専任宅建士の取引士証の写し | 専任性を確認するため |
「資産に関する調書」とは、個人申請者の資産状況を記載する書類のことです。法人の貸借対照表にあたるものと考えてください。
納税証明書は、個人の場合は所得税に関するものを用意します。開業初年度で前年の所得が無いケースもあるので、申請先に確認すると確実です。
申請後の審査期間と免許交付までの目安
知事免許の標準的な審査期間は、申請受理からおおむね30〜40日です。
この間に補正が入ると、その分だけ後ろにずれます。逆に言えば、最初に完璧な書類を出せれば最短で進みます。
免許通知が届いたら、保証協会への加入手続き(または供託)を行い、それが完了して初めて営業を開始できます。
免許取得後に必要な手続き(標識掲示・帳簿備付けなど)
免許を受けたら、事務所に標識(宅建業者票)を掲示し、帳簿と従業者名簿を備え付ける義務があります。
- 事務所の見やすい場所に標識(宅地建物取引業者票)を掲示する。
- 取引の帳簿を備え、取引ごとに記載する。
- 従業者名簿を備え付け、従業者証明書を携帯させる。
- 報酬額の掲示を事務所内に行う。
個人と法人どちらで開業すべきか比較
開業のしやすさとコストを優先するなら個人、信用と節税のメリットを重視するなら法人が有利です。

ただし、ここには見落としがちな落とし穴があります。後述する「免許の引き継ぎ」の問題です。
